スマホやSNS、ネットバンクなど、日常生活の中にあるデジタル情報。
若い世代には当たり前でも、60代の私たちにとっては「終活」で見落とされがちな部分です。
「紙の書類はまとめたけれど、スマホの中身はそのまま」「パスワードが多すぎて何がどこにあるのかわからない」そんな声をよく聞きます。
この記事では、私自身が65歳で経験した「パスワード迷子」から気づいたことをもとに、デジタル情報の整理・記録・引き継ぎの方法を、具体例を交えながら紹介していきます。
「いざというとき、家族に迷惑をかけたくない」その気持ちに寄り添う内容となっています。
初めての方でも安心して取り組めるよう、ステップごとにわかりやすく解説していきます。
Step1:終活デジタル情報まとめ方 3分類で漏れゼロ
デジタル終活を始めるにあたり、まず必要なのは「何を持っているか」を把握することです。
スマホの中やクラウド、パソコンなどに情報が分散している今、整理を始める前に、3つの分類に分けて全体像を見える化するのがポイントです。
SNS・メール・ネットバンク・サブスクを一覧化
私が最初にやったのは、使っているサービスをジャンルごとに書き出すことでした。
SNS(Facebook・Instagramなど)、メール(Gmail・プロバイダメール)、ネットバンク(楽天銀行・ゆうちょなど)、サブスク(動画配信・音楽・健康アプリ)をそれぞれ一覧に。
「こんなに契約してたんだ」と驚くと同時に、放置アカウントの多さに反省しました。
スマホ・パソコンのログイン情報と保存先を紐付け
次に、これらのサービスをどこで使っているのかを確認しました。
たとえば「楽天銀行はスマホアプリとChromeで使っている」「Facebookはパソコンのブラウザだけ」というように、使用デバイスと保存先を対応させて一覧に書き込みます。
どの機器からどの情報にアクセスできるかがわかると、引き継ぎのときにも迷わない状態になります。
電子書籍・定期購入など忘れがちな契約を洗い出し
特に忘れがちなのが、電子書籍アプリや新聞・雑誌などの定期購入サービスです。
私も「毎月400円払ってたアプリ」に全く気づかず、数年経ってからようやく解約しました。
スマホの「サブスクリプション管理」や「購入履歴」をチェックして、契約しているつもりがなかったサービスまで見つけるのがおすすめです。
この3分類に分けて一覧化することで、モレやダブりがぐっと減ります。
「今、何にお金を払っているか」「どのサービスを使っているか」が見えるだけでも、安心感が全然違いますよ。
Step2:60代向けデジタル終活ノート書き方5項目実例
デジタル情報を一覧化したら、次は「誰に、何を、どう伝えるか」をまとめる作業です。
そのために役立つのが「デジタル終活ノート」です。
紙のエンディングノートに書いてもよいですし、専用のアプリやテンプレートを使っても構いません。
私の場合は、エクセルとノートを併用しました。
サービス名・ID・パスワード・用途・解約方法を記入
まずは、一覧化したサービスについて、以下の5つの項目をノートに記載しました。
- サービス名(例:Amazonプライム)
- ID(登録メールアドレスやユーザー名)
- パスワード(またはパスワードマネージャーの保管場所)
- 用途(買い物、銀行、趣味など)
- 解約方法(アプリ内・電話・サイトURLなど)
特に高齢になると「何に使ってたか?」を忘れがちなので、用途や手続き先の記載は後々の負担軽減に役立ちます。
写真・クラウドデータの思い出コメントを添付
私にとって特に大切だったのは、クラウドに保管した写真や動画のデータ。
これもサービス名(Googleフォト、iCloudなど)、ログイン情報の他に、「誰との写真か」「いつのイベントか」をメモに残しました。
たとえば「2020年6月:孫の誕生日 Zoom会議キャプチャ」など、ちょっとしたコメントがあるだけで、家族の思い出が温かく引き継がれるのです。
写真や動画のクラウド整理法については、以下の記事に詳しくまとめています。
紙ノートとパスワード管理アプリの二重管理術
セキュリティ面を考慮して、パスワードそのものは紙に書かず、紙ノートにはヒントだけ記載。
パスワードは「1Password」というアプリに記録し、そのアプリのマスターパスワードだけを封筒に入れて保管しています。
このように、「アナログ+デジタル」の併用が、安心と使いやすさのバランスをとるコツだと思います。
終活ノートは「書いておけばOK」ではなく、「家族が読んで使えるかどうか」が大切。
私は娘に「これならわかる!」と太鼓判をもらえました。
Step3:パスワード引き継ぎ安全保管方法3選
デジタル終活でもっとも神経を使うのが「パスワードの管理と引き継ぎ方」です。
私自身、どのように保管すれば安全かつ家族が困らないか、いろいろ試行錯誤しました。
ここでは実際に取り入れてよかった3つの方法をご紹介します。
自宅金庫保管と予備USB暗号化で二重バックアップ
まず、パスワード情報をまとめたファイル(Excel)を暗号化し、USBメモリに保存。
このUSBを、自宅の耐火金庫に入れて保管しています。
同時に、別のUSBにも同じ情報を入れ、こちらは別の場所に避難用として保管。
金庫+USB+パスワード付きファイルと、三重のセキュリティで備えています。
信頼家族1人に封筒保管場所と開封条件を伝達
デジタル情報は本人しか知らないと、もしものときに誰もアクセスできません。
私は娘に「金庫の中の封筒に、重要な情報がある」とだけ伝え、普段は開けないように約束しています。
病気や事故など、明確な理由があったときにのみ開けてもらうという条件付きです。
この「条件付き開封ルール」が、心理的にも安心感をもたらしてくれました。
遺言・エンディングノート併用で法的安心を確保
引き継ぎについては、エンディングノートに書いておくだけでは法的効力が弱いと知り、簡易的な遺言書にも記載しました。
例えば「私が所有するデジタルアカウントの管理と解約は、娘○○に一任する」など。
法的効力は公正証書遺言ほどではありませんが、家族にとっては十分な指針になります。
私は行政書士さんにアドバイスをもらいながら作成しました。
大切なのは「自分がいなくてもアクセスできる状態」にしておくこと。
備えておくことで、自分も家族も気持ちが楽になりました。
デジタル資産を含む財産管理と認知症対策を同時に進めたい方は、こちらの記事をご覧ください。
番外編 デジタル情報更新ルール 年間2回で最新維持
せっかく作成したデジタル終活ノートや一覧表も、放置してしまっては意味がありません。
特にサブスクやSNS、パスワードの変更は頻繁にあるため、定期的な見直しと更新が必要です。
私は、無理なく続けられるように「年2回の点検ルール」を決めました。
誕生月と年末で契約棚卸しリマインダー設定
毎年の誕生日と年末に「デジタル棚卸しの日」として、スマホのカレンダーに通知をセットしています。
この日は、サブスクの契約状況やID・パスワードの確認、退会済みアカウントの削除などを一括チェック。
ほんの1時間でもやっておくと、情報が古くならず、万一のときに家族が混乱しない状態が保てます。
変更履歴欄追記で家族が迷わない状態を維持
ノートやファイルに「最終更新日」や「変更履歴欄」を設け、どの情報をいつ修正したかが分かるようにしています。
たとえば「2025/3/10 Netflix退会」「2025/5/15 iCloudパスワード変更」などを記載。
これによって、家族が見たときに「この情報は最新なのかどうか?」を迷わずに済むのです。
情報は整理して終わりではなく、更新してこそ活きた終活になります。
「次の更新はいつだっけ?」と自分にもリマインドする習慣ができて安心です。
まとめ:デジタル情報見える化で家族負担ゼロの優しい終活
私がデジタル終活に取り組んで一番感じたのは、「自分のため」だけでなく、「家族のため」でもあるということです。
スマホやSNS、ネットバンクなど、日常で便利に使っているものほど、いざという時には家族にとって“わからない世界”になりがちです。
だからこそ、今できることから少しずつ始めて、負担を減らしていくことが、思いやりある終活だと思います。
今日5分でできるアカウント一覧作成
今すぐにできるおすすめの第一歩は、「自分が使っているSNSやアプリのサービス名だけを紙に書き出すこと」です。
Facebook、LINE、X(旧Twitter)、Instagramなど、使っているものを思い出して並べるだけでOK。
5分で済むこの作業が、後の一覧表づくりの土台になります。
半年後 パスワード迷子ゼロ生活を実現
私は半年かけて、パスワードマネージャーを整え、家族との情報共有のルールを作り、「これで迷子ゼロ!」と安心できる状態になりました。
毎日を気持ちよく過ごすためにも、今の自分ができることを、小さくても一歩ずつ積み重ねていくことが大切です。
この記事が、あなたの「デジタル終活」の第一歩になればうれしいです。