「自分の死後、娘に負担をかけたくない。」
この思いが、私が本格的な終活に取り組むきっかけでした。
夫の死後、銀行や役所、保険会社などへの連絡や手続きに追われ、何度も窓口を回る大変さを身をもって体験しました。
これが「自分だったらもっと早く準備しておけたかも…」という後悔に変わり、“死後の手続き”に備えるようになったのです。
この記事では、私が実際に試した「死後手続きの委任方法」と、「死後事務委任契約」の内容や費用、準備の流れを体験談を交えてご紹介します。
同じように「子供に迷惑をかけたくない」と感じている方に、少しでも参考になれば幸いです。
死後手続きを誰に頼む?私が試した3つの依頼先
死後に必要となる手続きは、想像以上に多岐にわたります。
葬儀や納骨、役所への届け出、公共料金の解約、医療費や施設費の精算など、残された家族にとって大きな負担です。
そこで私は「娘に全てを任せる」以外の選択肢も検討することにしました。
以下は、私が実際に調べたり、試した3つの依頼先です。
娘へ託す場合の負担軽減メモ
最初に考えたのは、やはり実の娘に頼む方法でした。
しかし、娘はフルタイムで働いており、遠方に住んでいるため、頻繁に東京へ来られるわけではありません。
そのため「何を」「どこまで」任せるのかを整理し、娘の負担を少しでも軽くするための準備を始めました。
私はまず、「死後にやることリスト」を作成。
その中から娘に頼むこと、外部に委託することを分け、必要な書類や連絡先をまとめた「死後の手続きメモ」を1冊にまとめました。
これだけでも、いざという時の混乱がかなり防げると実感しています。
地元行政書士へ依頼前に交わす確認書3点
次に相談したのは、地元の行政書士さんでした。
「死後事務委任契約」の相談にのってくれるとのことで、初回相談は無料。
依頼する前に交わした確認書は以下の3つです。
1)実際にお願いできる手続きの範囲
2)費用の目安と支払いタイミング
3)娘との連携の取り方(緊急時連絡や引継ぎ方法)
きちんと確認しておくことで「知らない人に任せる不安」はかなり軽減されました。
高齢者専門の手続き代行サービス現地レポート
3つ目に検討したのが、高齢者専門の手続き代行業者です。
都内にあるサービス提供会社の一つを訪ね、事務所で直接話を聞いてきました。
対応してくださったのは、介護福祉士の資格も持つスタッフで、とても丁寧な対応でした。
料金体系が明確で、必要な手続きをパッケージで依頼できる仕組みになっており、私のような一人暮らしには安心感がありました。
中には、死後事務だけでなく「生前の身元保証から、相続税申告まで」すべて含まれるプランもあり、「これなら娘に何もさせなくて済むかも」と思ったほどです。
終活で備える死後事務委任契約!私が踏んだステップ
娘にすべての死後手続きを任せるのは現実的に難しい。
そう考えた私は、信頼できる第三者に一部を託す「死後事務委任契約」を結ぶことにしました。
ただし、何をどう決めるべきか分からず、最初は戸惑いました。
ここでは、私が実際に契約を結ぶまでに踏んだステップをご紹介します。
委任できる業務を1週間で棚卸する方法
まず始めたのが「何を委任したいか」の棚卸しです。
1週間かけて、自分が亡くなった後に必要な手続きをリストアップしました。
私の場合は、以下のような内容が出てきました。
・役所への死亡届の提出
・年金の停止手続き
・公共料金の解約
・葬儀・火葬・納骨
・医療費や施設費の清算
これをA4用紙2枚にまとめ、「これは娘に」「これは委任先に」と線引きして整理しました。
やってみると、自分が思っていた以上に「やるべきこと」が多く、準備の必要性を再確認しました。
遺言書や家族信託と組み合わせる判断基準
次に悩んだのは、「死後事務委任契約」だけで足りるのか?という点です。
行政書士さんに相談したところ、「財産の分配や遺言の執行まで任せたい場合は、遺言書や家族信託と組み合わせたほうがよい」とアドバイスされました。
私の場合は、財産は比較的シンプルで、娘一人だけが相続人。
そのため、遺言書を別途作成し、財産に関する部分はそちらに明記、
認知症対策として、娘を受託者として家族信託契約も結び、
「死後事務委任契約」では、事務手続きに特化して委任する形にしました。
両方を使い分けることで、手続きも気持ちの整理もすっきりと整いました。
委任できる死後事務項目!65歳一人暮らしの外部委託リスト
死後事務委任契約を結ぶにあたって、具体的に「どこまで外部に頼めるのか?」を確認することがとても大切でした。
一人暮らしの私にとって、娘の負担を最小限にしながら、必要な手続きをしっかり済ませるには、プロの力を上手に借りるのが得策だと実感しています。
以下に、私が外部委託した事務手続きをご紹介します。
葬儀・火葬・納骨に関連した代行サービス
まず、葬儀や火葬、納骨の手配ですが、これについては、夫が亡くなった際、葬儀場やお墓が決まっていなかったため、大変な苦労をした結果、
遺体の病院からの搬送、葬儀・火葬・納骨までのすべてをお願いできる納骨堂の会員契約をしました。
この時、家族全員(娘だけでなく、私の兄弟も)がメンバーになっており、もしもの時は電話1本で、納骨堂スタッフさんの指示に従って、搬送から納骨まで迷うことなく行えるため、不安はほぼありません。
個別の納骨堂は持たず、火葬後は、夫と同じく合同の永代供養をしてもらうように娘にも話してあります。
そのため、葬儀・火葬・納骨関連で「死後事務代行サービス」に依頼するのは、次にも記載した役所への死亡届提出・火葬許可証の申請と火葬許可証受け取りだけです。
役所届け出と公共料金解約の依頼
その他、「死後事務代行サービス」に、以下を依頼することにしました。
- 死亡届や健康保険の返却、マイナンバーの返納など、役所への届け出
- 水道・電気・ガス・電話・インターネットなど、各種契約の解約
- 年金の停止手続き
これらを一括で代行してもらうことで、娘の負担と、自宅⇔東京間の往来回数をかなり減らすことができます。
私は事前に契約先や手続き先を一覧にし、連絡先と契約番号もファイルにまとめました。
これがあるだけで、代行業者の作業もとてもスムーズになります。
医療費施設費の後払い精算を自動化
最後に、亡くなった後に発生する「医療費」や「介護施設の利用料」の後払い精算。
病院や施設によっては、死亡後に請求が届くことがあります。
私は「死後の清算用口座」を1つ作り、そこから必要な支払いができるよう、契約を結びました。
また、事前に病院や施設側とも「支払い方法」「連絡先」を共有。
これにより、娘が請求書を見て慌てることもなく、スムーズに対応できるように整えました。
死後事務代行サービス費用は?私が支払った内訳と相場
「死後の手続きなんて、自分のことじゃないから…」と思っていた私ですが、実際に見積もりをとってみて、はじめて現実的な金額に向き合いました。
結果として、私は納得できる範囲で契約を結びましたが、サービスによって費用の幅はかなり広いと感じました。
ここでは、私が支払った費用の内訳と、相場との比較をお伝えします。
パッケージ型と個別依頼型を比較した結果
まず検討したのは「パッケージ型」か「個別依頼型」か、という選択です。
パッケージ型は「葬儀手配・役所手続き・公共料金の解約・納骨」などをセットで行ってくれるサービスで、費用はおおよそ30〜50万円前後。
一方、個別依頼型は項目ごとに料金が設定されており、「死亡届提出:3万円」「公共料金解約:1件5,000円」など、必要なものだけ選べます。
私の場合は、最低限必要なものを選んで依頼する個別型を選び、結果として総額約28万円で済みました。
時間とお金のバランスを考えながら、自分に合う形を選ぶことが大切だと感じました。
見積もり書で確認する3つの数字
最終的に契約を決める前に、確認したのが「見積書」です。
私が意識したのは、以下の3つです。
1. 基本料金(必ずかかる費用)
2. オプション料金(選べるサービス)
3. 追加料金の条件(発生しうる追加項目)
これを一覧にして比較したことで、自分の中で「納得して任せる」ことができました。
安心して終活を進めるには、こうした“見える化”が大きなポイントになると感じています。
死後事務委任契約書を作る前に!私の準備チェックリスト
「契約書なんて、行政書士さんが作ってくれるから大丈夫」と思っていた私。
でも実際は、事前準備がきちんとできているかどうかで、契約のスムーズさやトラブル回避に大きな差が出ることが分かりました。
ここでは、私が実際に行った契約前の準備について、チェックリスト形式でご紹介します。
必要書類を3日で揃える手順
まず必要だったのは、本人確認書類と手続きに必要な基本情報です。
私が準備したのは次の通りです。
・運転免許証またはマイナンバーカードのコピー
・住民票(発行から3か月以内)
・印鑑登録証明書
・委任する内容を箇条書きにしたメモ
市役所の窓口で住民票と印鑑証明を取り、家で委任メモを整理。
すべて3日で準備できたので、「やると決めたら早かった」というのが正直な感想です。
トラブルを防ぐための条項チェック術
契約書には、専門的な言い回しがたくさん出てきます。
そのため、内容をそのまま受け取らず、自分の言葉で「こういう意味かな?」と確認することが大切です。
特に注意したのは以下の点です。
・報酬の支払い方法(死後に支払う形か、前払いか)
・業務の範囲(自分が希望する内容が含まれているか)
・委任解除や契約終了時の条件
私は行政書士さんに質問をぶつけ、「これは家族の代わりとして動いてくれる内容ですか?」と何度も確認しました。
言いにくくても、しっかり確認することが後悔を防ぐポイントだと思います。
契約内容を毎年見直す簡単ルール
契約したからといって、ずっとそのままでよいとは限りません。
私は「毎年の誕生日に契約内容を見直す」と決めました。
年齢とともに体調や生活スタイルも変わるので、委任したい内容や相手が変わることもあります。
ファイルにまとめた「終活ノート」に、契約書のコピーと更新記録を書いています。
こうすることで、「古くなって使えない契約」にならず、常に娘にも安心してもらえる体制が保てるのです。
まとめ:誰に何を頼む?60代死後準備の実践と費用一覧
死後手続きの準備を始めた頃は、「どこから手をつけたらいいのか」「誰に何を頼めばいいのか」が本当に分かりませんでした。
でも一つずつ整理していく中で、「娘に頼むこと」「専門家に依頼すること」「代行業者にお願いできること」が見えてきました。
ここでは、私が実際に行った準備を、依頼先別に分類し、実際にかかった費用とともにまとめてご紹介します。
依頼内容と費用の一覧表
依頼先 | 内容 | 費用(税込) | 備考 |
---|---|---|---|
娘 | ・死亡届提出の確認・立ち会い ・火葬許可証の受け取り ・親族・友人への訃報連絡 | 0円 | 家族でなければ対応できない部分のみ依頼 |
行政書士 | ・死後事務委任契約書の作成 ・家族信託契約書の作成 ・公正証書遺言の作成サポート | 約180,000円 | 報酬15万円+契約書作成費用3万円+印紙代等実費 |
死後事務代行業者 | ・役所への死亡届提出代行(3万円) ・公共料金等の契約解約(約2万円) ・年金の停止手続き(1万円) ・医療費・施設費の後払い精算サポート(2万円) ・事前相談・書類作成補助など | 約280,000円 | 個別依頼型で必要なものだけ選択 |
合計 | 約46万円 |
死後事務に関する私の3つの実感
この終活を通して、私は次の3つを強く感じました。
- すべてを子供に任せるのは酷だということ。遠方で働く娘に、突然大量の手続きを負わせるのは現実的ではありませんでした。
- プロの手を借りることで安心と効率を得られること。行政書士や代行業者との契約によって、心の負担が一気に軽くなりました。
- 費用はかかっても、家族の安心には代えられないこと。46万円という金額は大きいですが、「これで娘が慌てずに済むなら」と思えば納得の出費でした。
60代の今だからできる終活を
まだ元気に動ける60代のうちに準備を進めておくことが、未来の自分と家族への最大の思いやりだと実感しています。
「まだ早い」と思わず、まずは“何を”“誰に”頼むのかを紙に書き出してみてください。
それだけでも、不安が一歩軽くなりますよ。
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