「できれば最後まで自分らしく暮らしたいけれど、万が一のとき、娘に迷惑をかけたくない。」
そう思い始めたのは、60代半ばを過ぎた頃でした。
元気な今だからこそ、自分の希望や経済状況に合った“終の住処”を選んでおきたい。
この記事では、私が実際に考えた「住み替えのきっかけ」から、見学や費用の比較、そして入居後のリアルな暮らしまで、ひとつずつ丁寧に紹介していきます。
高齢者向け住宅の種類や、判断するための基準がわかれば、きっと今の不安も和らぐはずです。
これから住み替えを検討する方にとって、安心材料となるような情報をお届けします。
65歳一人暮らしが終の住処を検討し始めた3つのきっかけ
私が「この家にずっと住み続けて大丈夫かしら?」と考えるようになったのは、65歳になって一人暮らしにも慣れた頃でした。
ふとした日常の中で、小さな不安や現実的な負担が積み重なり、終の住処について真剣に考えるようになったのです。
ここでは、実際に私が動き出すきっかけとなった3つの出来事をご紹介します。
夜間体調急変への不安を解消したい動機
夫を亡くして以来、急な発熱や動悸など体調の変化が起きたとき、一人ではどうしようもないという不安が常につきまとっていました。
特に夜中に具合が悪くなったとき、近所に頼れる人がいないという現実は、想像以上に心細いものです。
健康なうちに、見守り体制や緊急対応が整った住まいへ移る選択肢を真剣に考えるようになりました。

救急車を呼ぶほどじゃないけど「何かあったら怖いな…」という夜の不安、思っていた以上にストレスでした。
広すぎる戸建て維持費年間50万円の負担
今住んでいる戸建て住宅は、子育て時代を見越して建てた4LDK。
しかし今では、使っていない部屋が3つ、掃除も管理も手が回りません。
固定資産税、火災保険、庭の手入れ費などを含めて、維持費は年に約50万円。
これを今後も払い続けるのかと思うと、資金のやりくりに不安が募りました。
娘に家の後始末を頼みたくない親心
私には遠方に住む娘が一人います。
いつか私が亡くなったとき、この家の処分や遺品整理をすべて任せることになるのではと気づいた瞬間、胸がざわつきました。
子どもに手間や時間、感情的な負担をかけたくないという思いが、「住まいの見直し」を始める最大の動機になりました。
- 夜間の体調変化にすぐ対応できる体制がない
- 家が広すぎて維持費と管理が重荷になってきた
- 娘に片づけや手続きの負担をかけたくない
高齢者住宅タイプ別費用比較表で3分で理解
終の住処を選ぶうえで最も気になるのは、やはり費用負担です。
高齢者向け住宅といっても種類はさまざま。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホーム、そして自宅介護など、それぞれに費用構造が異なります。
ここでは、私が検討したタイプ別の費用感を、比較しやすいようにまとめました。
サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの月額費用差
サ高住と有料老人ホームでは、月額費用にかなりの差があります。
サ高住は比較的自立した方向けで、月額15〜20万円程度が一般的。
一方、有料老人ホームは介護度の高い方が多く入居するため、月額25〜35万円前後かかることも少なくありません。
自宅介護と賃貸型サ高住初期費用を試算
「自宅に住み続けながら訪問介護などを使う」方法もありますが、住宅のバリアフリー改修やヘルパー利用料が必要です。
一方、賃貸型サ高住は、入居一時金が0円〜数十万円程度に抑えられる物件も増えています。
介護保険適用範囲で変わる自己負担率
介護保険サービスを利用する場合、所得に応じて自己負担が1割〜3割に変わります。
「要介護認定」を受けていないとサービスを使えないので、今後の変化も見据えて考えることが大切です。
住まいの種類 | 月額費用目安 | 初期費用 | 対象者 |
---|---|---|---|
サ高住 | 15〜20万円 | 0〜数十万円 | 自立〜要支援 |
有料老人ホーム | 25〜35万円 | 100万円以上も | 要介護 |
自宅介護 | 5〜15万円+改修費 | 改修工事で数十万円 | 要支援〜要介護 |

私自身は「いきなり高額なホームに入るのは不安…」と思って、初期費用の少ないサ高住から調べ始めました。
初期費用だけでなく、月額費用とサービス内容のバランスを冷静に見極めることが大切です
私がサ高住を見学して決めた理由とリアルな暮らし
「パンフレットを見るだけじゃわからない」
そう思い立って、私は近隣のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を5件見学しました。
それぞれに特色がありましたが、最終的に決め手となったのは、生活の安心感と自分らしさを保てる環境が両立していた点でした。
見守りサービス24時間体制で安心を確保
どの施設にも、夜間も対応してくれる見守りスタッフが常駐しており、体調の変化や緊急時にも備えがあることが確認できました。
特に、ナースコールがベッドやトイレにも備えられていたのは心強いポイントでした。
私は軽い持病があるので、24時間体制のサポートは大きな安心材料でした。

見学のとき、「このボタンを押せばすぐ来てくれます」と説明を受けて、思わず胸がじーんとしました。
食事イベントが交流を生む生活リズム
ある施設では、週に1度のイベント食やお誕生日メニューが用意されており、自然と入居者同士の交流が生まれる工夫がされていました。
食事も日替わりで、栄養バランスだけでなく、季節感のある献立にこだわっているとのこと。
一人暮らしのときは食事が適当になりがちだった私にとって、これは大きな魅力でした。
居室25平米でプライバシーとバリアフリー両立
私が気に入った部屋は、25平米の1ルームタイプ。
段差のない床や手すり付きのトイレ・浴室など、バリアフリー設計がしっかりしているうえ、キッチンや洗濯機置き場も備わっていて、自分のペースで暮らせるのが魅力でした。
「守られすぎず、自立も大切にしたい」私には、サ高住がちょうどよい選択でした。
- 24時間の見守り体制と緊急時の対応
- 食事の質やイベントなど生活の楽しみ
- 居室の広さとバリアフリー設備の両立
入居条件と費用を実例で公開:65歳女性の場合
サ高住を見学する中で、「入居するには何が必要なの?」「費用はどれくらいかかるの?」と疑問に感じる場面が多々ありました。
ここでは、65歳・一人暮らしの女性である私が実際に確認した入居条件や、費用のモデルケースをご紹介します。
健康診断結果と介護度で変わる入居可否
サ高住では、基本的に自立〜要支援1・2までの方が対象になります。
ただし、施設によっては要介護でも軽度なら可というところもあり、健康診断の結果や既往歴によって判断されます。
入居時に求められたのは、健康診断書、緊急連絡先、保証人の情報でした。
入居一時金ゼロプラン月額18万円モデルケース
私が入居を検討した施設では、入居一時金が不要な「ゼロプラン」が選べました。
その代わり、月額費用が18万円(家賃・管理費・食費・生活支援含む)となっていました。
年金と少しのパート収入を合わせれば、なんとか維持できる範囲内です。

月18万円というと高く感じますが、水道光熱費や食費も込みなので、自宅生活とあまり差がないと感じました。
自治体補助制度で年間36万円削減する方法
自治体によっては、高齢者向け住宅への入居に補助金や家賃助成が出る場合があります。
私の自治体では、年収250万円未満の場合、月3万円の家賃補助があり、年間で最大36万円の削減が可能でした。
入居前に、必ず自治体の「高齢者福祉課」などで補助制度を確認することをおすすめします。
項目 | 内容 |
---|---|
年齢 | 65歳 |
健康状態 | 要支援1・持病あり(服薬管理可能) |
入居一時金 | 0円 |
月額費用 | 18万円(食費・光熱費込み) |
補助制度 | 月3万円補助あり(条件付き) |
高齢者住宅メリットデメリットを体験評価5段階
「サ高住って実際どうなの?」と疑問を持つ方も多いと思います。
私自身、見学や資料だけではイメージしにくく、入居者の声を頼りに比較しました。
ここでは、実際に暮らす中で感じたメリットとデメリットを、5段階評価でリアルにご紹介します。
安心感評価:5点満点で見た強み弱み
24時間見守り体制やスタッフの声かけなど、安心感は申し分なく、私は5段階評価で4.5点をつけています。
ただ、夜勤スタッフが1名だけの日があるという点は、少し不安要素でもありました。

スタッフさんが親切なのはありがたいですが、「人手不足の日はどうなるのかな」と思う瞬間もありました。
費用負担と資産寿命シミュレーション
費用面については、自宅生活より少し高めという印象。
ただし、光熱費・食費・見守りサービス込みなので、単純比較では測れません。
試算では、年金月12万円+貯金月6万円取り崩しで、10年間は安心して暮らせる計算になりました。
生活サービス質のバラツキ対策
入居後に気づいたのは、掃除や食事の質がスタッフによって差があるという点。
例えば、曜日によって味が薄かったり、部屋の掃除が雑なこともありました。
契約前には「サービスの質」についても具体的に確認し、なるべく見学時に現場の様子をよく見ることが大切です。
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
安心感 | ★★★★☆ | 見守り体制は充実。夜勤人数は要確認。 |
費用バランス | ★★★★☆ | 年金+貯蓄で現実的。補助があればより安心。 |
サービス質 | ★★★☆☆ | スタッフにより対応にムラあり。 |
住み替え成功のコツ3ステップ:元気なうちに動く
「もう少し後でいいかな…」と迷っていた私ですが、元気なうちに決断して本当によかったと今は思っています。
住み替えには時間も手間もかかりますが、計画的に動けば負担は最小限にできます。
ここでは、私が実践して効果的だった3つのステップをご紹介します。
候補施設リストアップと見学予約1ヶ月計画
最初に行ったのは、ネットと役所で情報を集め、5件の施設候補をリスト化することでした。
1週間に1〜2件のペースで見学を予約し、1ヶ月かけて比較検討しました。
パンフレットだけではわからない「雰囲気」や「スタッフの対応」は、現地に行ってこそ見えてきます。

私は見学の前に「チェックリスト」を自作して持参しました。気になる項目を書き込むだけでも、判断がグッと楽になりますよ。
子供と資金計画を共有して意思統一
次にしたのは、娘との資金計画の共有です。
「いくらまでなら安心して払えるか」「貯金の取り崩しペースはどうするか」など、具体的に数字を見ながら話し合いました。
「後から知らされて戸惑った」というトラブルを避けるためにも、早めの情報共有が大切です。
エンディングノートに住まい希望を記載
最後に、自分の希望をエンディングノートに記載しました。
将来介護が必要になったときに備えて、「できれば同じ施設に住み続けたい」「最終的に病院ではなくここで看取られたい」などの希望も添えました。
これは娘にとっても、私の意思を汲み取るうえで大きな支えになると感じました。
- 情報収集+1ヶ月の見学計画を立てる
- 家族と資金計画を共有し、安心のラインを確認
- 希望条件をエンディングノートに記録しておく
まとめ終の住処選びで安心と自立を手に入れる
これまでの暮らしを見直し、「これからの安心と自立」を見据えて住み替えを考えることは、決して後ろ向きなことではありません。
むしろ、自分らしい暮らしを最後まで続けるための前向きな準備です。
特に一人暮らしの場合、健康や経済面だけでなく、「誰かと繋がっていられる環境」が思った以上に心の支えになります。
今回の記事が、皆さんが終の住処を考えるきっかけになれば嬉しいです。
今日からできる情報収集チェックリスト
いきなり見学に行かなくても、まずは小さな情報収集から始めてみましょう。
以下のチェックリストは、私が実際に使った項目です。
- 自分の住む地域の高齢者住宅の種類を調べる
- 自治体の補助制度を確認する(福祉課に相談)
- 家計と年金でまかなえる月額上限を計算する
- 気になる施設の資料請求をする
- 親しい家族や友人に、住み替えの希望を話す
2年以内入居実現ロードマップ
「老後の住まい選び」は一朝一夕では決まりません。
余裕を持って2年以内に入居することを目標に、スケジュールを立てると安心です。
以下は、私の実際の行動を元に作成したロードマップです。
時期 | 行動内容 |
---|---|
〜6ヶ月 | 情報収集/自治体の制度確認/資料請求 |
6〜12ヶ月 | 候補施設の見学/家族と資金計画を共有 |
12〜18ヶ月 | 優先順位を整理/契約準備/医師の健康診断 |
18〜24ヶ月 | 入居申し込み・引っ越し・新生活スタート |

実際に行動してみると、「なんだ、こんなに段取りがあるんだ」と驚きました。でも一歩ずつ進めば、意外と気持ちが軽くなりますよ。
終の住処は「いつか」ではなく「今から」考えるのがちょうどいいタイミングです
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